TES4-輝輪酸紀行

PCゲーム「oblivion」のRP小説とMOD解説感想などなど。

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【プレイ日記133】澱んだ街角で僕らは出会った【Short Tale#2】




「私の為に旅に出てくれないか」


出し抜けに、グレイ・プリンスはアタシにそう言った。


「あん?」

「先日、母が死んだ。そして死の直前、私にこの鍵を託したのだ。
これが真実の扉を開ける鍵だと言って」



そう言うプリンスの武骨な手には、古ぼけた小さな鍵が握りしめられていた。










「私は帝都で育ったが、生まれたのは別の場所だ」


グレイ・プリンス――アグロナク・グロ・マログは言った。


「私の母はロヴィディクス卿に雇われた使用人で、彼の砦に住んでいた。
そして母と卿は道ならぬ恋に落ちた。そうして生まれたのが私だ」

「へぇ、アンタの母さんやるじゃないか」



オークの使用人が貴族を落とすなんて。
それとも、ロヴィディクス卿とやらが余程の物好きだったのか。

そも、オークは一般的には醜く、野蛮な種族だと言われている。
ヒトとオークが愛を育むのは珍しい事だった。


「生来気性の激しかったロヴィディクス夫人はこの事を知るや怒り狂った。
彼女は母と私の二人を殺すと脅し、それを恐れた母は私を連れて身を引いた。
私達は砦から逃げ出し、本来貴族として有する権利を失ったのだ」

「私生児に貴族の権利も何もないんじゃないか」

「しかし私には貴族の血が確実に流れている。そして卿と夫人の間に
子供は生まれなかった。家督を継ぐ権利は私にある」

「生まれな『かった』?何で過去形なんだ?」

「理由は知らないが、砦は荒廃し、ロヴィディクス家は絶えてしまったのだ。
お前にはその砦へおもむき、私が卿の血族であることを示す証拠を持ち帰って欲しい。
自分でやりたい所だが、興行がある故、遠出する事もままならん」

「興行があるのはアタシも一緒なんだが」

「お前が戦う相手はもう居ないだろう?」



プリンスは笑って言った。


「後はお前がいつ私と戦う覚悟をするかだけだ、ブルーチームのチャンピオン。
いや、『アイアンメイデン』と呼んだ方がいいか?」

「その呼び方、やめてくれねえか。馬鹿にされてる様にしか聞こえないんだが」

「ははは、お前にもまだ恥じらう心があったのだな」

「・・・そんなんじゃねえよ」



ニヤニヤと笑うプリンスから視線を逸らす。
別にそんなんじゃない。

鉄の処女<アイアンメイデン>―――

「嫁の貰い手がない」と言われてるようなものだ。
その辺の小娘じゃあるまいし、別にそんな事気にしちゃいない。

気にしちゃいないが―――その、つまり、そういう事だ。


「旅費は全て私が出そう。他に報酬は用意できないが、そうだな――
お前が帰ってきたら本では学べない私の剣術の奥義を教えよう。
悪い話ではないと思うが、どうかな」



悪くない提案に思えた。
アリーナの剣闘士なら誰もが羨むグランド・チャンピオンの剣術。
そうでなくとも、この無敗の王者とはいずれ戦わなくてはならないのだ。
その剣術が盗めるならむしろ破格といえるかもしれない。

だが―――


「アタシはあんたを殺す女だぜ?そんな簡単に手の内晒していいのかい」

「確かに疑われても無理はなかろう。だが私は本気だ。他に与えられる物がない故にな。
そしてこれは、お前をあなどって言っている訳でもない」



プリンスは威厳と誇りを持った瞳でそう答えた。


「・・・アンタにとっては命をかけてまで欲しい物な訳だ。わかんないな」

「そうだろうか?」

「もうそのナントカ家は没落してるんだろ?アンタに何の得があるんだ?」

「誇りだよ」



恥ずかしげもなく、アグロナク・グロ・マログは言った。


「私が貴族であるという確固たる証拠さえあれば、もう誰も私の話を疑わなくなる。
灰色の王子から真のプリンスへと生まれ変わるのだ」


















***


















・・・結局引き受けてしまった。
破格の報酬が待っている事もあったが、アグロナクの輝く瞳を見ていたら
何となく、断れなくなってしまったのだ。


「日陰者から抜け出せる、か」


つまりは、グレイ・プリンスの言いたい事はそういう事なのだろう。
ヒトからもオークからも疎まれるハーフオークの宿命―――
それも高貴な血統という肩書きがあれば塗り変えられる。
・・・とでも考えているのだろうか。


「まぁ」


わからないでもない。
そう口の中でつぶやきながら、アリーナの門から出ると、
陽の光がアタシの目を刺した。

アリーナ暮らしをし始めてからどれほど経ったのだろう。
久々に見た外の世界は広く、そして眩しかった。

それでも――私が帰る場所は、血で血を洗うこの犬小屋しかないのだ。


「やあ、元気ですか?」


と。
声を掛けられた方を振り返ると、神経質そうなアルゴニアンが立っていた。
何かを恐れている様にちらちらと辺りを見回しているし、その眼差しには鬼気迫る
ものがあった―――なんだコイツ?

アタシが訝しげに挙動不審なソイツを睨みつけていると、アルゴニアンは何か
失言をしてしまったのかと思ったのか、取り繕う様に口早に話し始めた。


「答えなくてもいいですよ。話しかけたかっただけなんです。
て、帝都にやってきてから初めて誰かと口を利けましたよ」

「そりゃ、そうだろうな。昼間っからフードを目深に被った、挙動不審の
アルゴニアンなんて話しかけたくもない」

「そ、そうですか?私は別の理由かと思いました」

「別の理由?」

「悪臭のように自分に纏わり付く死の気配に、多くの人が眉をひそめるからだと思います」


アルゴニアンは言った。


「川を泳いでも洗い流すことの出来ない、強烈な悪臭。私の鱗に強固に
染み込んでいるものです」



改めてアルゴニアンを見る。
フードの下から覗く顔は穏やかな物だったが、その身体に目を落とすと
服の上からでも分かる程たくましく引き締まっており、戦闘に関する
何らかの訓練や鍛錬を積み重ねてきた者だという事が見てとれた。

要するに、自分が人や動物を殺してきた者だと言いたいのだろうか。


「ふーん。それで?」


そう答えると、アルゴニアンはしばし目を丸くし、そしてどこか
期待を寄せるような顔で言った。


「あなたは私を避けないのですね。何故ですか?」

「別に。アンタみたいな奴、珍しくもない」



命のやりとりがアタシの生活だ。
そしてこの辺にいる奴も。
人殺しが自分の周囲をうろついていようが、別に何とも思わなかった。


「なるほど、私と話をする気になった、ただ一人の人物は、
私と同じ暗い過去を隠していたのですね」

「あん?何が言いたいんだ?」



回りくどいアルゴニアンの言い回しに私が苛立つと、奴は
目をキョロキョロさせながら口を走らせた。


「気に障ったならすいません。人と話すのが不慣れな物で。
あの・・・本当にすいません」



引き締まった腕を忙しなく動かしながら、アルゴニアンは弁解した。
その体躯とオドオドとした態度のギャップが可笑しくて、
アタシはつい吹き出してしまった。


「あの、何か?」

「いや、ヘンな奴だな、アンタ」



そう言ってアタシは笑った。

そういえばアリーナの外で人と話すのはいつ振りだろう。
剣と血錆の世界から解放され、初めて出会ったそのアルゴニアンとの
なんでもない会話は、妙に心を和ませるものだった。


「・・・あの、もし聞く気があればなのですが」


そんなアタシを見てアルゴニアンはしばらく黙っていたが、
意を決した様に顔を上げて言った。


「赤の他人であるあなたに提案したいことがありまして―――」

















それが、彼との出会いだった。




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テーマ:Oblivion - ジャンル:ゲーム

  1. 2011/10/18(火) 22:08:54|
  2. RP小説-戦士ギルド篇
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天気輪(てん・きりん)

PS3版をプレイ後、
PC新調を機に2009年6月から
TES4 oblivionを開始。

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